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ヨコハマアートサイトラウンジvol.30
子どもの日常とアート

今年度のヨコハマアートサイトラウンジは、コロナ禍への対応として、収録したものを公開するかたちをとっています。

ヨコハマアートサイトラウンジvol.30「子どもの日常とアート」

大木智子 親と子のつどいの広場「しゅーくるーむ」代表
自閉症スペクトラムや発達障害をもつ子を含む4男2女の母。
子育て支援の活動や自身の子どもに向き合う中で「お互いを知ることで誰もがもっと過ごしやすい社会ができるのでは」という考えを持つようになり、理念が同じ「神奈川区療育おやこネットワークgift」に参加。「大きなりんごの会」では、育てづらさを抱える保護者同士が、その振り回されっぷりを笑い合いながら対策を見つけられるようなおはなし会を開いている。
成澤朱未 蒼昊美術會(そうこうびじゅつかい)代表
水彩を描いて30年、はまっこ4代目。
幼少期に水彩の画材をもらったことをきっかけに、絵を描きはじめる。芸術に造詣が深かった家族の影響の中で育ち、舞踏をはじめとしたあらゆる芸術から影響を受けた。平成21年に現在の蒼昊美術會を創立。公募展の運営やワークショップを通して、身近に素朴にアートに触れる機会を提供したい、水彩本来の魅力を広めたいという思いで、蒼昊美術會を運営している。

 

子どもが日常のなかで、あらゆるものに出会い、手で触れて創造する場から、コミュニケーションの機会や居場所が形成されています。横浜における子どもの文化的な体験や学びに出会う場、その取り組みのお話を通して、日常のなかで触れる文化や、そこに生まれる芸術の在り方について、考える場として、子どもやアートに関わるお二人にお話をお伺いしました。

おたがいに知り、ちがいを楽しむ

――大木智子さんの活動についてお聞かせください
大木さん:私は現在主に3つの活動を行っています。1つ目は「親と子のつどいの広場しゅーくるーむ」での活動です。ここは横浜市の子育て支援事業で就学前の子どもと保護者が遊びにくる広場です。主に新聞や風船など素材あそびを用意して、子どもが自由に活動できるような工夫をしています。家ではなかなか出来ない遊びも、広いスペースでみんなで見守りながら出来る場所です。2つ目は、「療育おやこネットワークgift」です。私自身の家庭にも療育が必要な子どもがいることもあり、活動に参加するようになりました。療育が必要な子どもや保護者の気持ちを発信し、理解を広めることで、問題を解決する方向に向かうことを目指しています。3つ目は「大きなりんごの会」です。療育が必要な子の保護者の座談会というと、辛い気持ちを共有するものが多いのですが、この会は、子どもたちの面白さを共有することを目指した座談会です。もちろん困っているし、振り回されていますが、子どもたちの独特な発想や面白さを、一緒に大笑いして、悩みだけでなく、やっぱりこの子たちはかわいいという気持ちになれたらいいなと思っています。

――子ども自身を見つめること、お互いに知り合うことの重要性を感じました。
大木さん:発達障害というものの認識は広がっているけれど、中身は人の数だけあり、まったく違います。だから、この子はどういう子なのかということに目を向けるのが大事です。でも、それって実際には障害のあるなしに関わらないことなんですよね。何が好きなのか知っていると楽しいよねという基本的な考えがあると、お互いにうまくいくと思います。社会でもそれは同じだと思うんです。みんなちがってみんないいんだよという考えを大切にしていきたいです。

――ひとつの家庭で孤立しがちな現状を感じますか。
大木さん:コロナの影響で、出産の時点から人に会えないという子育てが進んでいます。外出や他の人と会う機会が減るなかで、子育てについて自分だけで問題を抱えてネットや本とにらめっこする方が多いと思います。少し喋るだけで気持ちが明るくなるのに、それが容易に出来ないことで追い込まれてしまうんですね。しゅーくるーむや、大きなりんごの会でも、「ここがあって良かった」という声をよく聞きます。繋がりたいのに繋がれないという問題は強く感じています

美しさに出会うための準備

――成澤朱未さんさんの活動についてお聞かせください
成澤さん:蒼昊美術會では水彩画を基本としたアートの普及活動を行っています。主な活動は公募展の開催と水彩のワークショップです。まずはワークショップで水彩を広め、そこから公募展にも参加してもらおうという試みです。ワークショップでは、塩で砂を表したり、ラップで波模様を表したり、シャボン玉を使ったりと身近にある色んなものを使って楽しめる工夫をしており、小さなお子さんにも人気です。今年も2歳から80歳までの幅広い方が参加してくれました。子どもたちに普段使用されることの多い絵の具は、乾くとカサカサしたり、発色が良くないものが多いので、この機会に本当の水彩の色の綺麗さを知って欲しいです。小さいころの体験は体に染みついていくので、この実感を覚えて好きになってくれることを願っています。ワークショップで描かれた作品は横浜元町にある画廊「ギャラリー元町」に展示され、神奈川県民ホールギャラリーでの公募展の一部としても展示されます。公募展の前半では見に来てくれたひとが投票できるようになっています。ただ観るだけではなくて自分が何を好きなのか考えながら作品をみて欲しいためです。さらに水彩を知りたくなった方には勉強する機会としてシンポジウムも用意して、さらなる学びの場を開いています。

――ワークショップでは事前に入念なご準備をされていますよね。
成澤さん:用意は大変だけど大事です。省かれてしまいがちな板に紙を固定する工程や、下絵、マスキングインクなど、私たちが準備しておくことで、ワークショップの時間内でも水彩の楽しさを感じてもらえると思います。こういった一つ一つで、描きやすさや、美しさが変わるので、印象が全くちがうと思います。参加者のみなさんが楽しんでくれると用意のし甲斐があったと思います。

左:大木さん、右:成澤さん

 

ありのままの発想に耳を傾けることから

大木さん:お子さんがお絵かきをしている時に、保護者が声をかけて、絵をいわゆる正解に近づけようとする場面を時々見かけます。自由に描けているのではなく、うまくかけていないという捉え方になってしまうことがあるようです。水彩のワークショップでは、そういったことはありますか。

成澤さん:ワークショップでは親子で一緒に描いてもらうせいか、そういった場面は案外見かけません。保護者の方も自分がつくるのに必死になっていますね。でも、たしかに答えを出したくなるのはわかります。けれども私がワークショップを通して思うのは、みんなわけがあって描いているということです。そのためNOとは言わないようにしています。提案はするけれどNOとは言いません。

大木さん:なるほど。お母さんも一緒に描いたらいいかもしれないと思いました。同じことでも一緒にやることで見え方が変わるかもしれません。

――子どもたちと関わるときに意識していることはありますか。
大木さん:子どものすることに感想を言わず「あなたはそう考えるんだね」と受け止めるだけにしてます。感想まで言うと子どもが気を使ってその言葉に寄せてきてしまうことがあるんです。でも、ただ聞くだけにすると、子どもが発想を自分の言葉で伝えてくれるんです。

成澤さん:大人は特にそうですが、子どもでも固定概念で描いてしまうことがあります。ワークショップでも「海は青で描くんだよね」と聞く子がいたら、「青じゃなくてもいいよ」と声をかけて、そのとき感じた色を自由に使ってもらえるように意識しています。絵を思うように描けなくても何かを見て感じたことを話すなど、想像を膨らませる時間が大切だと思います。

お二人は、子ども自身の発想をまず受け止めたり、固定概念などから子どもをそっと解放するような寄り添い方をしておられました。大人が何かを教えるのではなく、子ども自身やその発想に耳を傾けることで、子どもたちは自ずとその創造性を発揮していくのかもしれません。

 

日時 2021年9月13日(月)に収録
出演 ゲスト|
大木智子(親と子のつどいの広場 しゅーくるーむ代表・NPO法人親がめ)
成澤朱未(蒼昊美術會 代表)

進行/田中真実・森崎花(ヨコハマアートサイト事務局)

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