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アートサイトラウンジvol.35
森、都市、路上~生きる場所と身体の相互関係~

アートサイトラウンジvol.35「森、都市、路上~生きる場所と身体の相互関係~」

開催日時|
2022 年12 月6 日(火)

ゲスト|
奥野克巳(立教大学教授、文化人類学者)
アオキ裕キ(新人H ソケリッサ!主宰、ダンサー・振付家)

進行/小川智紀

会場:横浜中華街「廣東會館倶樂部」(YPAM会場)およびオンライン
YPAMエクスチェンジ内にて開催

奥野克巳(立教大学教授、文化人類学者)
1982年、20歳でメキシコの先住民テペワノを単独訪問。翌年、バングラデシュで上座部仏教僧となり、1988年から1年間インドネシア群島を放浪する。1994年からボルネオ島焼畑民カリスのシャーマニズムと呪術の現地調査、2006年から狩猟民プナンのフィールドワークを行う。著作に『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』(辰巳出版、2022)『一億年の森の思考法』(教育評論社、2022)『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房、2018)など。
アオキ裕キ(新人H ソケリッサ!主宰、ダンサー・振付家)
タレントのバックダンサー業などを経て、2001年NY留学中に同時多発テロに遭遇、人間の内にある驚異に触れ、踊りの在り方を問い直す。「日々生きることに向き合わざる得ない体」を求め、2005年より路上生活経験者と共に「新人Hソケリッサ!」を開始。NEXTREAM21 最優秀賞受賞(2004)、コニカミノルタソーシャルデザインアワード2016 グランプリ受賞。

 

~レポート~

 東南アジア・ボルネオ島の森の民「プナン」のフィールドワークを行う人類学者の奥野克巳さんと、路上生活経験者で構成されるダンスユニット「新人H ソケリッサ!」主宰のアオキ裕キさんをゲストに迎え、環境と身体の関係についてお話を伺いました。

奥野さんはプナンの人たちの生き方を語りました。現代社会を生きる人は人生の中で生きがいや目標を見出し、失敗や成功をしながら生きている。しかし食べ物を探し、食べることを繰り返す、まさに「生きるために食べる」人たちがプナンにはいて、そこには未来への目標を仮定する概念がないということ。ここには未来や目標とは本当に必要なものなのかという、私たちの生き方への根本的な問いかけがあるのではないかと奥野さんは考えます。また排泄行為を通じたコミュニケーションについて紹介し、その身体性にも迫りました。

アオキさんはソケリッサのこれまでについて語りました。以前はコンサートやCM などでバックダンサーをしていたアオキさん。あるとき、ストリートミュージシャンの横でお尻を出して寝ている路上生活者との出会いをきっかけに、彼らの身体性をダンスで表現できないかと考えるようになります。その後、支援団体などの協力を得ながら人を集めワークショップを開催しました。アオキさんはどうすれば彼らにやりたいことを伝えられるか、信頼してもらえるか、そしてそれを観客に伝えられるか、とても悩みながら対話と稽古を重ねます。そして2007年、第一回公演を開催。その後も全国で活動を続け、2020年には彼らの活動を追ったドキュメンタリー映画も公開されました。

ディスカッションでは、路上生活とプナンの環境は単純に比較できないという前提はあるが、役割に人を当てはめる現代社会のあり方に問いを立て、人間の本来もっている身体性や生活からその糸口を探しているという互いの共通点を見出しました。

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